グラスを手にした瞬間、これはいつもの一杯とは少し違うかもしれない、と思った。 見た目や香りだけでなく、口にする前から、期待と想像が静かに巡りはじめるカクテル。その体験が生まれた場所が南青山にあるBar Vie Lembrancaだ。

カウンターに立つのは「HENNESSY X.O Cocktail Competition 2016」チャンピオンの秋谷修二氏。

Bar Vie Lembrancaにてオーナーバーテンダーを務める秋谷氏

野菜、果物、ハーブ、スパイスなど多様な素材を使い、科学やアートの要素を取り入れ独創的なカクテルを創造する。受け継がれてきた歴史から現代。そして未来への夢や期待。生きた土壌、大地、自然の豊かさ…「生体制御学」を学んだという秋谷氏が大切にする世界観が形になっている。

秋谷氏の手さばきはなめらかで美しく、まるで茶道の所作のようだった

カクテルの材料を、言葉にせずとも感覚で受け取ってもらいたい。
そんな想いから、グラスのそばには、カクテルで使用する素材をもとに作られた、小さなスイーツが添えられている。

自然のものを用い、たとえば、フルーツは、フレッシュな状態を起点に、ピューレや抽出など、様々な形で味わいを表現する。
見た目や香りで五感を刺激し、手にとる前から好奇心をかき立てた。

口に含むと、口当たりが丸く、飽きがこない。
飲みづかれすることがない、どこかでそっと寄り添ってくれるカクテル。

自然の価値や秋谷氏の世界観を体験として味わうことができた。

シグネチャーカクテルのTHE LIFE

新しいカクテルを考えるときは「人の顔を思い浮かべながらつくる」という。
誰に届けたいかを思い描くことで、味わいが形を成していく。

約30年のキャリアを持つ今も、一杯に辿り着くまでに10回、20回と試作を重ねているのだそう。

自然素材へ真摯に向き合う秋谷氏は、自らの手で採取したハチミツをカクテルの素材として使うこともある

あえてメニューが存在しないBar Vie Lembranca。

クラシックやスタンダード、歴史ある一杯を大切にしながら、自由なカクテルを生み出す。
型に縛られず、それでいて本質からは決して離れない。

「お客様の反応や表情が、すべてダイレクトに自分に返ってくる。それが贅沢なんです。独り占めしたいからこそ、一人でやるのが楽しい。もう、やめられないですね。」

そう微笑みながら語る秋谷氏の姿が、印象に残った。

和洋折衷の装飾や器が置かれた店内

店内には約700本ものボトルが並び、絵画やオブジェ、オリジナルのビターズやオーナメントが随所に配されている。

その空間はバーでありながら、まるで美術館や実験室のようでもある。

秋谷氏の自由な発想と探究心が、そのまま空間として表される。

木の扉と灯りが、好奇心をくすぐる

青山一丁目のマンションの一階。
扉を開けると、外の空気とは少し違う時間が流れている。

一杯のカクテルから、新しい感性がすっと呼び起こされる。そんな場所だった。

Bar Vie Lembranca
東京都港区南青山2-8-2南青山サマリアマンション1F