「家を買う」という決断の前に、まず「すんで」に遊びに行く。 一都三県を中心に、そんな不思議な現象を巻き起こしている不動産会社がある。株式会社すんで(以下、すんで社)だ。 もともと埼玉県からスタートした同社は、今年、東京・日本橋のスタイリッシュなオフィスへと本社を移転した。 掲げるコーポレートメッセージは、「それぞれの荒川を越えろ。」。 まさに会社自身が、自らのコンセプトを体現するように荒川を越え、次なるステージへと挑戦を進めたことになる。その象徴的なオフィスで、取締役副社長の淺田南氏にお話を伺った。

業界の常識を覆す。多様な顧客動線

すんで社のユニークな取り組みとして、家購入の経験者(すんでメンター)に物件・エリア選びから街のリアルな住み心地までを匿名で相談できる「すんで」というサービスがある。不動産会社の営業活動ではなく、同じ「家選びを経験した先輩」だからこそメリットもデメリットも忖度なしで教えてくれるシステムは、不動産業界における「情報の非対称性」解消に直結するものだ。

顧客にも大いに活用されているだろうと予想していたが、淺田氏から飛び出したのは意外な言葉だった。「メンター制度を利用されて取引につながるお客様は全体の2割程度です」。外側から彼らを見ていた者にとっては新鮮な驚きだった。

同社の売上の主軸は、自社で物件を仕入れて販売する「買取再販事業」と一都三県を中心に一戸建てやマンションの売買を幅広くサポートする「不動産仲介事業」である。営業担当者も仲介と買取をあえて分けないマルチタスク体制。その本質は「泥臭く、ゴリゴリに実務をこなす不動産プロフェッショナル集団」なのだ。

では、なぜ「すんで」がこれほどまでに特別視されるのか。その答えは、同社へと繋がる顧客の動線が、あまりにも多様でユニークだからだ。

従来の不動産業界における顧客獲得といえば、ポータルサイトに物件情報を載せて反響を待つのが主流だった。しかし、すんで社の場合、物件情報を見て問い合わせする顧客以外に、様々な独自のタッチポイントが用意されている。

前述の相談プラットフォーム「すんで」、エリアやテーマごとに細分化された複数のグループ上で顧客・メンター・すんで社の社員による情報交換や交流が行われている「すんでコミュニティ」、定期的に開催される「各種セミナー(ときにはキャリアセミナーなど、直接不動産と関係なさそうなテーマもある)」、年1回のポップアップ「すんでショップ」など、不動産会社の枠を飛び越えていて、おもしろい。特筆すべきは、どれも「いま、不動産取引の予定がない人」でも自由に参加できる点だ。

特に「すんでショップ」は、公式マスコットキャラクターがあしらわれたオリジナルグッズが並び、誰でも気軽に遊びに行ける空間になっている。社員自らが店頭に立ち、おなじみのメンターたちも来場するため、「なにを見てきてくださったんですか?」「あ、SNSをフォローしていて……」といった直接の交流が生まれるのだ。決して安価ではないオリジナルパーカーの購入者を集めて、後日飲み会が開催されたこともあった。

代表取締役の岡野氏(通称:すんで埼玉)をはじめとする社員たちのSNS発信や、これらのイベントに触れた顧客の中には、「買う物件は決めていないけれど、とにかく『すんで社』に頼みたい」と、最初から会社や人を“指名”して相談にくる人も少なくない。

計算や損得勘定を越えた、濁りのない「ファンビジネス」

すんで社が実践しているのは、業界の常識にとらわれない「圧倒的なファンビジネス」である。まだ家を買う段階にない「潜在層」から、買う・売るを決めた「顕在層」、すでに家を買い終えた「既存客」にいたるまで、すべてのグラデーションの人々と途切れることのないエンゲージメントを結び続けている。

社員を中心に、メンター、フォロワー(ファン)、そして未来のお客様と同心円状に重なり、拡大する円全体を、ひとつの大切なコミュニティとして丸ごと愛しているのだ。

直接の顧客ではない潜在層を囲い込むことによる「具体的な利益」について尋ねると、淺田氏は「複合的なものでもあるので、それによってどれだけ利益が出ているかはわからない」と率直に笑った。計算や損得勘定だけで動いていないからこそ、このコミュニティには濁りがない。

多くの企業が、潜在層の囲い込みのためにコミュニティを作ろうとしては失敗している。ビジネスの思惑が見え透いてしまったり、運用の義務感で中の人が疲弊したりしてしまうからだ。すんで社がコミュニティを成功させている秘訣は何か。答えは非常にシンプルだった。

「私たちが無理せず、自然体でやってるから、じゃないですかね」

仕事だからといって、プライベートと違う顔をしてかしこまることはしない。すんで社の社員は、オンもオフも地続きで、自分たちが誰よりも人生を楽しんでいる。だから、その姿を見た周りの人が「楽しそうだな、自分もあの輪に入りたいな」と吸い寄せられるように集まってくる。

「嘘のなさ」こそが、現代の消費者が求めている価値であり、一朝一夕には真似できないすんで社の強みなのだ。

単なる不動産屋ではない、「挑戦応援カンパニー」

そもそも、すんで社を「不動産会社」という既存のジャンルに当てはめようとすること自体が間違っているのかもしれない。

彼らの存在意義は、「みんなの挑戦を応援する『挑戦応援カンパニー』」である。 その「挑戦」の中身は、単純に家を買う・売るという行為だけにとどまらない。プロポーズをする、転職をする、資格試験に挑む……人生におけるあらゆる前向きな「挑戦」のすべてが含まれている。

代表の岡野氏自身、不動産業界の出身ではない。人生の挑戦を応援したい、人生を楽しみ尽くす人を増やしたい。その想いを体現するための手段として、人生で大きな決断を伴う「不動産」という商材が選ばれたに過ぎないのだ。

だからこそ、会社自体も埼玉から荒川を越えて日本橋へと挑戦の駒を進めたし、キャリアのセミナーもやるし、オリジナルパーカーも作る。すべては「挑戦する誰かの背中を押すため」という軸で一貫している。

挑戦の輪の広がり。「すんで」という生き方に、私たちは集まる

家を買うことは、ゴールではない。新しい挑戦のスタートだ。だとしたら、ただ物件の鍵を引き渡して終わる関係よりも、その先の暮らしの中で、気軽に立ち寄れるオープンなコミュニティがあることは、心強いはずだ。

「それぞれの荒川を越えろ。」

このメッセージに胸を熱くしたファンたちが、今日もまた、パーカーを羽織ってすんで社のドアを叩く。家探しの、その先にある面白い人生を手に入れるために。

取締役副社長 淺田氏(左)と代表取締役 岡野氏(右)株式会社すんで 本社にて

【会社概要】
会社名:株式会社すんで(sunde Inc.)
公式コーポレートサイト:https://corp.sun-de.jp/
住まい相談サービスサイト:https://sun-de.jp/