美味しくなる組み合わせを作る「3つのコツ」
お気に入りのショコラティエのチョコや、お取り寄せしたスイーツ。それらを日本酒でさらに輝かせるために知っておきたいコツをご紹介していきます。

1. 「美味しい温度」に近づける
多くのスイーツ(特にチョコレート)は、口内の温度(約37℃)で滑らかに溶け出す時に芳醇な風味が広がるように設計されています。
しかし、そこにキンキンに冷やした日本酒を入れてしまうと、せっかく広がり始めた香りや味わいを押さえ込んでしまったり、心地よく溶ける質感を損なってしまったりすることがあります。
一方で、カスタードや生クリームなど、冷たい状態でも濃厚で美味しいと感じるものは冷たいお酒と合わせても違和感なく溶け合う傾向にあります。
日本酒は基本的に冷蔵庫から出してすぐ飲むことが多いと思いますが、少し室温に戻したり、温めたりしてスイーツと合わせると新たな発見があるかもしれません。日本酒はワインほど温度帯が厳密に定まっていない(美味しく楽しめる温度帯が複数ある)ので、自分の好みがどこにあるのか探ることも楽しみの一つになります。
2. 「風味のバランス」を整える
スイーツ×日本酒で味の調和をとりたい時、次の3パターンを覚えておくと便利です。
① 似ている風味で同調させる
一般的に、最も失敗のない合わせ方は同系統のスイーツと日本酒を合わせる方法です。
同じような「ボリューム感」や「風味の方向性」を合わせるイメージなので、例えば「 フレッシュな柑橘を使用したフルーツケーキ × 透明感のあるフルーティーな日本酒」や、「濃厚で少しビターなガトーショコラ × ナッツやドライフルーツのような風味のある熟成した日本酒」のように合わせます。
② 足りない要素を補完する
スイーツと日本酒、それぞれの個性をパズルのピースのように組み合わせ、味わいの輪郭を整える方法です。
例えば「ミルキーで甘みが主役のバニラアイスに、酸味が豊かで芳醇な日本酒」を合わせてみると、お酒の酸が上質なソースのような役割を果たし、単体では出会えなかった奥行きと、心地よいキレが生まれます。
お互いの五味(甘味、酸味、苦味、塩味、うま味)の足りない要素を補完することで、口の中でバランスがふわりと整う感覚を楽しめます。
③ 逆の要素で引き立て合う
一見すると相反する個性をあえてぶつけ、後味を軽やかに整える方法です。
例えば、「濃厚なコクのレアチーズケーキに、若々しくアルコールの角がしっかりした日本酒」を合わせると、アルコールのシャープな口当たりとお酒のキレがスイーツの重さを程よく和らげ、後味をリセットしてくれるため、次の一口をまた新鮮な驚きとともに迎えることができます。
余談ですが、この合わせ方のメリットは、苦手な要素をマスキング(隠す)できる点にあります。
「日本酒はアルコールがキツくて苦手」「クリームのコクが強いのはしんどい」など、「私はこれが苦手」という要素を和らげる効果がありますので、それぞれ単体では苦手だけど、組み合わせたら美味しく食べられるなんてことも少なくありません。
【番外:よくある失敗例】
「同じ要素を合わせる」という同調の方法を先ほど書きましたが、実はこのパターンで失敗することがあります。今回のスイーツで特に多いのが「甘味の打ち消し合い」。
チョコレートを食べた後にコーラを飲むと甘味が感じにくくなるのと同じ現象ですが、これは同じ味わいの要素をぶつけると相殺してしまうことで起きる悲しい組み合わせです。
甘味を抑えて他の風味を楽しみたい時には使える方法ですが、うまくいかない時には「スイーツの繊細な甘さが消え、日本酒の余韻の甘みも消えてバランスが崩れる」という悲劇が起こります。
「スイーツの甘み5」と「日本酒の甘み2」が合わさる→「スイーツの甘み3」と「日本酒の甘み0」になるという具合なので、甘みの強い方に弱い方が飲み込まれるイメージと覚えておくとよいかもしれません。
この現象をうまく活用することもありますが、それはまた別の機会にご紹介しましょう。
3. 「酒器の材質」で風味をコントロールする
最後は、お酒を注ぐ「器」の選択です。 器の形状や材質を変えるだけで、お酒の表情は驚くほど変わります。ご自宅にある酒器で、ぜひその変化を楽しんでみてください。
・ガラス:幅広くお酒の個性を生かす万能型
口当たりの印象は冷たくシャープ、日本酒の個性をそのままクリアに伝えてくれます。ボウル型で香りを華やかに捉えたり、ストレート型でスッキリとした味わいにしたり、形のバリエーションも豊富なのが嬉しいところ。
特に、繊細でフルーティーな香りを持つ日本酒をスイーツと合わせる時には、ワイングラスが活躍します。
・陶器:落ち着きと優しさをまとわせる深化型
土のぬくもりがある陶器は、口当たりも独特の柔らかさがあり、飲み手にもまろやかさや丸さの印象を与えてくれます。お酒の味わいを丸く、質感を柔らかに感じさせてくれるので、温めた日本酒や、旨味が強い日本酒を濃厚なチョコレートやナッツと合わせる際、より一体感を高める役割を果たします。
・漆器:エキス分と「とろみ」を捉える濃密型
漆器は、しっとりと吸い付くような肌触りが特徴です。これが、エキス分の多いお酒(貴醸酒など)が持つ「液体の密度」を違和感なく強調し、驚くほど艶やかな口当たりで楽しませてくれます。テリーヌやガナッシュのような、濃厚な口溶けを楽しむスイーツには、同様に「とろみ」も感じるようなしっとりした質感を添えてくれる漆器が贅沢な余韻を生んでくれます。
スイーツと日本酒の組み合わせでは、「温度・風味・器」の3つの視点をちょっと意識するだけで、それぞれが驚くほど多層的な表情を見せてくれます。
ここでお伝えした内容は正解ではなく考え方の一つです。難しく考える必要はありません。
大事なことは自由な感性で楽しむことです。そうすることが、新たな発見と暮らしを彩る贅沢な時間に繋がっていきます。
【実践編】実際にやってみました
季節はバレンタイン、スイーツファンにはたまらない時期ですね!
というわけで、早速自分でチョコレートを買い、他にもスイーツを購入していざ実食です。
(皆さんがバレンタインで楽しめるように、急いで買ってきました笑)
① 生チョコレート × 満寿泉 純米大吟醸 スペシャル ワイン樽熟成

生チョコの種類は3種類。
・ミルク
チョコの甘い余韻をサッと流しつつ、追いかけるようにオーク樽の芳醇な香りが立ち上がる。食後の甘みをさっぱりさせたいならオススメ◯。
・ホワイト&ベリー
風味が軽くなる感じはあるものの、ちょっと酸味が立ちすぎてしまい個人的にはちょっと苦手△。
・ビター
ほどよい甘みとビターな味わいにオーク樽の香りが加わって心地よい余韻が生まれます。トータルバランスが良い感じ◎。
<合わせた日本酒>
富山県の日本酒「満寿泉」より、モンラッシェの白ワイン樽で熟成させた純米大吟醸。オーク樽のニュアンスを纏うエレガントな芳香と洗練された味わいの全体バランスが秀逸。和と洋それぞれのエッセンスを見事に調和させた一本です。
② パイシュー × 七賢 山ノ霞 スパークリング

サクサク生地のパイシューに濃厚なカスタードクリームが包まれたスイーツ。
サクッとした歯触りとスパークリングの炭酸感がほどよくマッチ。クリーミーなカスタードとスパークリング日本酒が合わさることで軽やかなミルククリームのように変化しました。どっしりとしたクリームが軽い質感に生まれ変わり非常に美味しい!
<合わせた日本酒>
山梨県の日本酒「七賢」より、うすにごりのスパークリングを。シャンパーニュの製法と同様の瓶内二次発酵で造られ、生き生きとした発泡感となめらかな口当たりが特徴。ヨーグルトやレアチーズケーキのような甘酸っぱい風味と、余韻に現れる優しい米の甘みが心地よい一本です。
③ マカロン(アールグレイ)×薪水 吟醸

お菓子だけを食べると甘く香り豊かなミルクティーマカロン。ここにアルコールのパンチ力のあるスッキリした日本酒を合わせると、甘みが心地よく流れつつ、紅茶の風味だけがフレッシュな瑞々しさを取り戻し、爽やかにフワッと鼻に抜けていく。あまりの気持ちよさに食べる→飲む→食べる→飲むが止まらない。素晴らしい組み合わせでした。
<合わせた日本酒>
兵庫県の日本酒「桜正宗」より、アルコール度数がしっかりとある原酒の薪水を。そのまま飲むといわゆるトラディショナルな日本酒という感じですが、このアルコールのシャープさと、さっぱりとクリアな味わいはバタークリームのような融点の低いクリームと合わせるのにオススメの一本。
まとめ
日本酒とスイーツは、その個性を「温度・風味・器」の3つの視点で結びつけるだけで、面白いほど色々な表情を見せてくれます。
難しく考えることも楽しいですが、これと組み合わせたらどんな味になるんだろう?という興味から試してみるのも良いと思います。
自由な感性で楽しむことが大切なので、ぜひ「自分はこれが好きだ!」というマリアージュを探してみてください。
