箱根の森の中で、その音に出会った。 ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ内のカフェ「NOMU hakone」。陽光が降り注ぐ半屋外の空間で、どの席に座っても音楽が均一に聞こえることに気づいた。開放された空間で、音がばらけない。これは並大抵のことではない。帰り際、そっとスピーカーの背面を覗き込んだ。「SONOS」と記されていた。
画像出典:ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ[NOMU hakone]より

オーディオには多少の心得がある。かつてはアンプとペアスピーカーを組み、インシュレーターやスタンドのセッティングに時間を使うピュアオーディオ派だった。だからこそ、あの日の違和感は鮮明だった。扉を開け放った空間で均一な音場をつくるには、通常なら複数のスピーカーを精密に配置し、音響調整を重ねる必要がある。それを、あの黒い箱ふたつだけで実現していた。

帰宅後すぐに調べ、NOMU hakoneで使われていた「SONOS Five」を購入した。米国発のワイヤレスオーディオブランドが誇るフラッグシップ機。6基のカスタムドライバーと専用アンプを内蔵し、単体でステレオ再生を可能にする設計だという。

空間を満たす音を奏でる

事務所に設置し、専用アプリの「Trueplay」で音響調整を行った瞬間、世界が変わった。

iPhoneのマイクで部屋の反響を測定し、スピーカーの出音を自動補正する機能なのだが、設定が決まると、Fiveから出る音が「部屋を満たす」のだ。左右のスピーカーの間に音像が浮かぶ従来のステレオとはまったく異なる体験。空間そのものが音になる。

以来、仕事中は常にこのスピーカーから音楽を流している。Spotify、Apple Musicなど、サブスクで聴く膨大なライブラリが、この一台で空間オーディオに変わる。かつてCDを買い集め、プレーヤーを選び、スピーカーのセッティングを吟味していた日々を思えば、時代は確実に変わった。そしてSONOSは、その変化にもっとも適応したスピーカーだと思う。

現在、事務所の天井近くにセッティングして執務室全体を音で満たしている

価格は約8万円。決して安くはない。だが1日中、仕事の傍らで鳴らし続けて1年。すでに「元は取った」という実感がある。

ピュアオーディオの世界では、同じ投資額でアンプかスピーカーの片方しか買えない。しかもそれだけでは音は出ない。SONOSは電源を繋ぎ、Wi-Fiに接続するだけで完結する。この「潔さ」が、現代の住空間には合っている。アンプやスピーカースタンドが林立するリビングより、Fiveが一台、棚の上に佇む方が、今の暮らしには似合う。

背面にはライン入力も備える。手持ちのプレーヤーを繋げば、サブスクが解禁されていないCD音源をマルチルームで家中に流すこともできる。新旧の音源を一台で統合できるのは、コレクターにも嬉しい設計だ。

大きなリビングに、本格的なオーディオを置くほどではない。けれど、スマートスピーカーの音では物足りない。そんな「中間層」にこそ、この一台は響く。

部屋を音で満たすという体験。一度知ると、戻れなくなる。

画像出展:メーカ( SONOS)ホームページ
PRODUCT INFORMATION
SONOS Five 価格:79,800円(税込) サイズ:W364×H154×D203mm 重量:約6.36kg 対応:Wi-Fi、AirPlay 2、ライン入力(3.5mm)